個々の遺産の権利は、いつどの時点において各相続人へどのように引き継がれるのでしょうか。
法律上は、相続が開始した瞬間(被相続人が亡くなると同時)に、一部の例外を除いて、被相続人の財産に属したすべての権利義務が相続人へ承継されることになっています。そして、相続人が複数いる場合は、遺産は相続人全員の共有(相続分に応じて)となります。
この共有状態を解消させて、遺産ごとの単独権利を各相続人へ帰属させる作業が『遺産分割』の協議(遺産を分ける話し合い)です。そして、『遺産分割』の効力(結果)は相続開始の時(被相続人が亡くなった時)に遡ります。
しかし、多くの場合、遺産の種類や数またはその価値と各相続人の相続分を考慮しながら皆に平等な方法で遺産を分けることは困難であると思われます。例えば、相続人は2人いるけれど、遺産が不動産1カ所しかない場合です。
ただし、必ず相続分に応じて分けなければならないということはありません。複数の相続人のうち、特定の相続人に相続分を超える財産を取得させ、または特定の相続人だけに財産を取得させることも差し支えありません。
ここでは、協議(話し合い)の方法として4種類の方法を紹介しますので、参考にしてください。
方法1(現物分割)
遺産に属している個々の財産について、この土地はAさん、この預金はBさん、この株式はCさん、のように単純に個々の財産ごとの帰属先を決める方法です。また、例えば、1筆の土地を3筆に分筆して、それぞれの土地の単独所有者を決めることも可能ですし、2筆に分筆した土地の1筆を単独所有、他の1筆を相続人全員または相続人の一部の共有として決めることも可能です。
方法2(換価分割)
遺産の全部または一部を売却して、その売却代金を分ける方法です。
遺産の価値を現金化して分けることが可能です。
方法3(代償分割)
遺産を平等に分けることが困難であり、かつ遺産を現金化したくない事情がある場合、例えば、相続人がAさんとBさんの2名であり、遺産はAさんの自宅建物の敷地だけであるような場合に、その敷地をAさんが取得する代わりに、それに見合う金員(代償金)をAさんがBさんへ支払うという方法です。
この場合、代償金は相続財産とは関係がないAさんの財布から支払われることになりますが、相続手続の一環として可能です。
方法4(前記1~3の混合)
前記1~3の全部または一部の方法を交ぜて遺産を分けることができます。